Exhibition

読む風景写真 〜南北の視点から

タイラ・ジュン+露口啓二展


2023年9月30日(土)▶︎ 10月15日(日)

土日祝日 10:00〜16:00 オープン

入場料:ドネーション

Art Labo北舟

089-5244 豊頃町十弗357

tel 070-5360-8300


14日は作家在廊し、14:00よりアーティストトークをします。


協力 POETIC SCAPE

写真にはドキュメンタリー、報道、広告、複写、ブツ撮りなど様々な分野が広がっているように多くの機能があり、そこが写真表現の価値判断の難しさに繋がっています。

写真の重要な機能に記録があります。私たちは日々膨大な量の写真画像を見ながら、ここに記録された情報を瞬時に読み取っています。

この読み取るという行為も多様にあり、広告のキャッチコピーのようにワンフレーズを受けとるような読み方から、評論や分析のように複雑な内容を読み解くことまで幅広いものです。

膨大な写真表現の隆盛の一つに「映える」写真があります。映える写真は見るものの嗜好や欲望を刺激するように、現実をより「盛って」絵になる写真を志向し、撮る者も見る者もより高揚を志向します。それは現実の記録性から遠く離れていきます。

一方の極に現場写真やレントゲン写真があります。写る情報を序列なく記録するという無感情なスタンスの写真です。写真表現でも、このような「盛って」絵になる写真を避けて、より抑制した客観的で冷静な記録に徹しようとするスタンスがあります。こうした記録的な写真を見る者はその刺激に「高揚」するのではなく、静かに読み解くこととなります。

露口啓二は、特に北海道に関する歴史的由来のある土地に立ち、その場の情景を淡々と記録します。そこにはその痕跡があるかどうかもわからないほど、凡庸な風景で、見るものは普段気に留めることもない情景に痕跡を探してつぶさに読み解くことをし始めます。

タイラジュンは沖縄では日常風景にもなっている不発弾処理の現場を現場写真のように記録撮影し、その背後にある戦争の深い傷を静かに語ります。その奇妙な日常風景は歪みを含み、我々の目に静かな波紋を呼び起こします。

これらの写真は「映える」写真を見慣れた目には退屈に見えるものですが、我々が日々無意識に見ているものは、こうした退屈な情報の堆積でもあるのです。それを改めて意識的に見ると言うことも写真の機能なのです。(企画:白濱雅也)


和田賢一+伊藤眞理展

絵の生まれ出ずる処

90年代前後の日本で遅れてきた抽象表現主義のムーブメントがありました。その一群の中にひときわ鮮やかなカラーフィールドペインティングを描いていた和田賢一がいました。(当時のこの画家群は多く、激戦区でもありました)

エアブラシとたらしこみによる非接触の絵画はどこか慎ましやかでもあり、そのせいなのか当時の注目は今ひとつでした。

2008年享年51歳で逝去、その死後、作品のクオリティが徐々に知られるようになり、美術館への収蔵も数点実現しています。


今回、かなり大型の作品と、良質の小さめの作品、そして初期の未発表の印画紙着彩の作品の展示が実現しました。この印画紙着彩は印画紙用の着色材を用いてたらい込みのような技法を実験していたもので、後年の画風に大きく作用した習作群です。

そして和田賢一と人生を帆走した伊藤眞理の抽象絵画を同時展示します。伊藤眞理の絵画は撥墨など水墨画の技法を取り入れた東洋的な趣の濃いもので、部分的には和田賢一の作風と共通する部分があり、互いに触発されたところがあります。

十勝でのこの時代の抽象絵画の展示は近年では珍しいのではと思います。この機会をお見逃しなく。

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絵の生まれ出ずる処

和田賢一+伊藤眞理展

2023年7月8日(土)▶︎ 7月17日(月・祝)

10:00-15:30入館まで  火曜日休  入場料:ドネーション

Art Labo北舟

089-5244 豊頃町十弗357

tel 070-5360-8300


「その奥にある小さな泉」

緒方敏明+安藤榮作展

▪︎会期

6月17日(土)ー25日(日) 10:00〜16:00

火曜日休

17日に緒方さん 22日に安藤さん在廊予定です。

▪︎入場料 ドネーション(寄付)

▪︎会場

ArtLabo北舟/Northern Ark

豊頃町十弗355−2

(帯広ではありませんのでご注意ください)


「その奥にある小さな泉」

震災、コロナ禍を体験し、今またウクライナ侵攻に遭遇している私たちは、これまでしばらくの間、拠り所としてきた科学や民主主義という20世紀近代の根幹が危うく脆いものであると深く実感しました。

その無力感のなかで、親しい人との会話や日常的な環境などささやかで大切なことを見過ごしてきたと気づいたことでしょう。それは特にコロナ禍の長い時間において痛切に実感したことです。

美術家は世間の常識に囚われず内省に長けていて、そうした視線を常に持ち合わせていることが多い人達です。彼らが見つめてきた目に映っている現実の姿のその奥にあるもの、認知しているつもりの自分自身のその奥底にあるものを見つめ表出します。

緒方敏明は、陶による建築彫刻のなかに透明感をたたえた泉のような空間を生み出し、それは繊細な作家自身の聖域のようです。斧の彫刻家で知られる安藤滎作は、優れた素描家の面を持ちそのドローイングはフォルムの奥に潜むものをなぞるような線で、作家自身の感覚の軌跡を思わせます。

二人の作品からは、繊細で抽象的すぎて日常ではキャッチできない微細な感覚を現前に見ることができます。


木を見て森を識り、地に入る。桑迫伽奈 大森梨紗子 2人展

北舟の帯広出張展示スペースNight Owlの展覧会第二弾です。

写真に刺繍を施すという独創的な手法で注目の写真家、桑迫伽奈と自給自足的な生活を送りながら現代の花鳥画を制作する画家、大森梨紗子の2人展。

事物を掴む、識る、実感するという感覚を視覚を超えてつかもうとする2人のそれぞれのアプローチをご覧ください。

※前回の経験から今回は金土日の開廊となります。


桑迫伽奈 大森梨紗子 二人展

〜木を見て森を識り、地に入る〜

2023年3月31日(金)〜4月16日(日)

金・土・日14:00-20:00  

最終日は18:00まで 

入場料 ドネーション(寄付)


Art Labo 北舟 Night Owl

〒080-0011 北海道帯広市西1条南16丁目14-1

問合せ 070-5360-8300 

fukagawalabo@gmail.com

主催•企画 白濱雅也

協力 上田雅寛


タコノアシコシ〜北国のインディペンデントアニメーション

Art Labo 北舟Night Owlのオープニング企画は

「タコノアシコシ」ー北国のインディペンデントアニメーションーです。

北国にはアニメーションの静かな動きがあると感じます。稚内在住のさとうゆかさんは、以前より各所で名前を散見してて、まだお会いしてないのですが、出品を快諾してくださいました。版画のアニメーションという気が遠くなりそうな手法を用いています。森本めぐみさんは佐藤拓実さんの企画展示「塔を下から組む」で知り合い、Twitter上で流していたサイレントループのGIFアニメーションが面白いと感じてお願いしました。越後しのさんと浅野託矢さんは大連で一緒に展示した作家/音楽家で、東北の空気を感じる静謐な心象世界を描いています。

アニメーション上映のほか絵画作品、原画、絵コンテなども展示予定です。

タコノアシコシ 

北国のインディペンデントアニメーション


期間 2023年2月13日〜2月26日 会期中無休

14:00〜20:00

入場料 ドネーション(カンパ)

※平日は野草茶の喫茶サービス予定

会場:Art Labo 北舟 Night Owl(ナイトアウル)

〒080-0011 北海道帯広市西1条南16丁目14−1


北海道に来て、アニメーションの静かな動向を感じている。それは新千歳空港アニメーション映画祭が開催されていることなどにも現れている。元々人気漫画家を輩出している土地柄であることは遠因としてあるのだろう。また道内の大学のメディアアート系の卒業生が活躍していることに由来する。

ここでいうアニメーションはスタジオなどの集団で制作されるいわゆるアニメとは異なり、インディペンデントアニメーションと呼ばれる極めて個人的な制作スタイルのアニメーションである。以前は膨大な量の原画や撮影を経て制作されていたが、PCやデジタルカメラなどのデバイスやアプリケーションの進化により、比較的手軽に取り組めるようになった。しかしそれでも、アニメーション制作は絵画や写真に比べると時間と労力が求められる表現手法である。

長い冬を家で過ごすことが多い北国は、コツコツと作業を続けることに向いている。また人口密度も低く田園や山野が広がる風土で、自省的な志向になることもあるだろう。そうした気風が育ったとして不思議はなく、アニメーションの制作過程と通じるものを感じる。

さとうゆかは道内のインディペンデントアニメーションの代表的な作家で、版画を用いたダークサイドを伴う作風は北国の影の部分を感じさせる。また近年は独自の手法を試みている。

森本めぐみは20代から絵画やインスタレーションで活躍し、ナイーブな少女的世界を描き出していた。育児で制作ペースが遅くなる中、GIFアニメーションを制作する。それはループ状のサイレント動画で、現代的な動く絵画でもある。

越後しのは独学で制作を始め、震災後、自然との調和を願う着ぐるみ的人物像を描く独自の作風となる。音楽家で映像作家の浅野託矢とのコラボレーションで内省的な映像作品を制作している。

今回出品の3人の作品には、日々の営みの中から生まれ出るしたたかさと共に捉えどころのない空虚感も漂う。それは北国の厳しさと美しさから生まれる気質と関係している。北国にはアニメーションの静かな動向があると感じます。

かつて、ここには

かつて、ここには

大橋英児  白濱雅也  森利博

2022年5月1日(日)▶︎ 5月8日(日)

10:00-15:30入館まで

会期中無休

入場料ドネーション制

-風景の遺影

写真は撮った瞬間から過去のものとなり、死や終末の堆積が始まる。撮ったその瞬間は「死んだ」ものとなりその遺影を眺めている。写真はそうした追憶から逃れることはできない。ある風景を撮るとき、そこには既に長い時間の堆積がある。その目に見えない堆積は「写る」のであろうか。

大橋英児は自動販売機の置かれた風景写真で知られているが、その傍らで北海道開拓の過程で囚人らによって建設された「囚人道路」の歴史を追って撮影している。その写真はそこにある無念の死の重みと忘却について問いかける。

森利博は道東の鉄道跡などの産業遺構を追いかけ、繁栄を通り過ぎた人の営みの残滓を掬い撮る。

白濱雅也は北海道で知る「消え去った街」の存在を体感的気配として読み取ろうとする。

この展覧会は消えた風景を見つめて、その写真に潜む死と歴史を探す試みである。

企画:白濱雅也

大橋 英児 Ohashi Eiji

1955年稚内市生まれ、京都芸術大学修士課程在学中、1984年より2005年までネパール・チベット・パキスタン・中国西域などヒマラヤ周辺の撮影をし、写真展、写真集を発刊。2008年より日本の典型的な風景である自販機のある風景シリーズ「RoadsideLights」のプロジェクトを開始。新宿ニコンサロン、禅フォトギャラリーでの個展、札幌芸術の森美術館での企画展参加。2020年より「Prisoner Road-囚人道路」のプロジェクト開始。第34回写真の町東川賞「特別作家賞」受賞。

森 利博 Mori Toshihiro

1968年、北海道根室市生まれ。

東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)卒業後、スタジオマン・広告新聞社等に勤務。1995年、Uターンして産業遺産・廃墟を撮影、ブログでの公開を始める。2014年、帯広市FLOWMOTIONにて企画展『MONOCHROME LANDSCAPE in Obihiro 色のない景色 - 帯広編』、写真集『Tribute -北の大地の記憶-』(クムラン/東京)を刊行。7年の沈黙の後、2021年、帯広市写真工房ミニ・ギャラリーにて、写真展『FRONTIER-失われる大地の記憶-』開催。北海道・中標津町在住。

白濱 雅也 Shirahama Masaya

1961年岩手県釜石市生まれ、1988年多摩美術大学美術学部卒業。90年代より日本社会の矛盾をテーマにした物語的な絵画や立体を発表、故郷の被災と親類の死を機に鎮魂と再生の意を込めた制作に変わる。2014年に公募企画「POST3.11」展を東京都美術館で開催、続編を原爆の図丸木美術館、本郷新記念札幌彫刻美術館で企画/開催。近年、写真や絵本も手がけ、軽トラによる移動美術館「福寿走」も進行中。2014年より十勝在住、自主ギャラリーArtLabo北舟/NorthenArk開設、主宰。


Poisonous Dolls 〜柔らかな激情

会期5/2(土)〜5/25(月)の土日月祝で開催予定でしたが、緊急事態宣言等の影響を鑑み、中止といたします。

時間11:00〜16:00入場まで

出品作家:伊賀美和子 伽井丹彌 川上和歌子 ミヤタケイコ

愛でられることを拒否る人形たち

 愛玩の対象であったり分身であったりする人形。人形は彫刻と隣接領域にいながら芸術とみなされて来なかったものですが、20世紀後半からの美術表現領域の拡大に伴って、表現手法に取り入れるようになりました。布などの素材を取り入れるなかで人物表現に近づいたり、演劇的に演出して撮影したり、日常的な感覚を意図的に用いたりとアプローチも多様です。その背景にはジェンダーや民族などをめぐる境界を越えようとする意識の芽生えがあります。

 人形には意思がないことから弱者の置かれた境遇を反映させる役割を追うこととなり、シンボリックな彫刻とはまた異なる世界を見せています。

 愛玩を超えて、痛み、怒り、恐れ、神秘など多様な感情を内包する作品を生み出している4人の女性作家を紹介します。

企画:白濱雅也